2022.01.12

接着剤レスで難接着性素材を高速接着

接着剤や薬剤を使わず、大気圧プラズマで高速・強固に接着

 

接着剤や薬剤を使わず難接着性素材を高速で強固に接着する技術を開発しました。

難接着性素材であるシリコーンゴムを、大気圧プラズマで表面改質してシリコーンゴム同士を接着します。

接着剤を使用しないため、安全性が高く環境にやさしい、熱処理を必要としない脱炭素プロセスです。

医療やヘルスケア分野や、ウェアラブル機器用の導電性シリコーンゴムへの応用が期待されています。

 

動画.接着剤レス接着(YouTube)

 

 

写真1.プラズマで接着したシリコーンゴム

 

写真2.シリコーンゴムにプラズマ処理する様子

 


 

1.背景

 

シリコーンゴムは耐薬品性や非粘着性に優れる反面、接着しにくい素材であるため、接着面に予め薬品を塗布したり、フレーム処理(火炎処理)で微粒子を焼き付けたりなどの下地処理が一般的ですが、これらはシリコーンゴムと接着剤とを接着することが前提の処理です。接着剤は、硬化に時間を要したり、硬化を促進するために加熱したりする必要があります。また、接着剤自体の硬度耐薬品性などの特性が、製品の特性に直接影響します。

 

 

2.開発した技術の特徴

 

株式会社サンラインは、難接着性素材であるシリコーンゴム同士を、大気圧プラズマ処理を応用することで、接着剤や薬剤を使用せず安全に高速かつ強固に接着する技術を開発しました。

シリコーンゴムに大気圧プラズマを照射し、照射した面を貼り合わせるだけで、瞬間的にシリコーンゴム同士を接着することができます。貼り合わせた後の加熱や加圧は不要で、大気中の常温・常圧下に置いておくだけで、強固に接着します。

 

表1は、大気圧プラズマを一定時間処理して接着したシリコーンゴム(幅10mm×長さ100mm×厚み1.0mm)の接着強さを示します。試験は剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法(JIS K 6850(1999))に準じて実施し、試験速度300mm/minで測定しました(写真3)。25N/cm2以上では接着面が剥離することなく、材料破壊しました(写真4)。

 

表1.プラズマ処理時間による引張せん断接着強さ

 

写真3.引張試験機と試料の様子

 

写真4.引張試験前後のシリコーンゴム(左:試験前, 右:試験後)

 

上記実験の結果、ある特定のガスでのみ、1秒以下の短時間でシリコーンゴムを接着することができました。ガスA~Iは混合気体であり、構成するガスの種類や体積比率が異なります。

プラズマは電気とガスによって生成され、従来は、真空や減圧下でなければ安定的にプラズマを生成することが困難でした。また、大気圧下で安定的にプラズマ生成するには、限られたガスしか使用することができませんでした。株式会社サンラインは、あらゆるガスを大気圧下で安定的にプラズマ化する技術を保有しており多様なプラズマ(ラジカル類)を生成することができるため、難接着性素材などの化学的に安定的な物質の表面を、効果的に改質することができます。

本技術は、複雑な混合気体を大気圧下で安定的にプラズマ化する独自技術による成果です。

ある特定の条件で大気圧プラズマ処理したシリコーンゴム同士を貼り合わせると、材料破壊するほど接着力が向上しましたが、分子間力による接着力のみでは困難であり、化学結合の寄与による強固な結合の結果であると考えられます。また、シリコーンゴム同士が化学結合するためには、シリコーンゴムの接着面に官能基が形成されている必要があり、大気圧プラズマ処理した表面には官能基が形成されていると考えられます。

大気圧プラズマ処理したシリコーンゴムの表面に、0.1w/v%ブロモフェノールブルー・エタノール(50)溶液を滴下したところ、褐色から青色へ変化しました(写真5)。

これらの事実は、ある特定の条件で大気圧プラズマ処理することによって、シリコーンゴムの表面に官能基が付与された可能性を示唆しています。

 

 

写真5.シリコーンゴムにブロモフェノールブルーを滴下した様子(左:未処理、右:プラズマ処理面)

 

さらに、大気圧プラズマ処理した表面を電子顕微鏡で観察したところ、大気圧プラズマ処理していないシリコーンゴムに比べ、表面の差異はみられませんでした(写真6)。接着力を強化する方法として、接着面を粗くして接着面積を増加する方法が知られていますが、本技術はシリコーンゴムの表面を粗くする手法とは異なり、シリコーンゴムに物理的な損傷を与えることなく、強固な接着性を実現しています。

 

写真6.表面の電子顕微鏡画像

 

 

プラズマを照射した部分にのみ化学結合が生じている点も特徴です。プラズマを部分に照射することで選択的に表面改質できるため、シリコーンゴムの表面にコントロールされたパターンで反応活性を付与することが期待できます。

 

 

3.展望

 

シリコーンゴムは生理的に不活性で、他の有機高分子材料に比べ体組織に対する反応が少ないため、哺乳器具などの乳児用品やバルーンカテーテルや人工心肺膜などの医療器具など広く使用されています。そのため医療やヘルスケア分野では、薬剤を使用しない安全な接着プロセスとしての応用が期待されます。

電気刺激を利用した医療機器や、体の動きを検知するセンシングデバイスの部材としても導電性シリコーンゴムの使用が拡大しています。そのためウェアラブル機器分野では、導電性接着剤を不要としながら、シリコーンゴムのフレキシブル性を損なうことのない接続方法として期待されます。

また、シリコーンゴムへ染色性を付与することで意匠性を向上したり、プラズマ処理面の強い反応活性を利用した物質合成プロセスへ応用したりすることが期待できます。

接着剤レスで薬剤を使用せず加熱加圧が不要な本技術は、作業環境の安全性が高く製造工程の脱炭素化に大きく貢献することができます。

 

 

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