新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する大気圧プラズマの適応 | CASE | 大気圧プラズマ事業サービスサイト:サンライン
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する大気圧プラズマの適応

2021.04.05

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する大気圧プラズマの適応

■新型コロナウイルス感染症

2019年に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、 SARSコロナウイルス2 (SARS-CoV-2)がヒトに感染することによって発症する感染症とされています。 感染経路に飛沫感染が含まれることから、全世界的な流行に見舞われ、その対応に各国が苦慮しているのが現状です。 近年まれに見るパンデミックとなり、暗中模索の中、公衆衛生上のさまざまな対応が取られていますが、 弊社にも大気圧プラズマによる殺菌(殺ウイルス)を期待する問い合わせが数多く寄せられております。 このため、2021年2月現在での弊社の見解を「殺菌技術」「環境改善技術」 「検出/治療(ケア)技術」の観点に分けて 掲載いたします。

引用:株式会社プラズマコンセプト東京(http://www.pc-tokyo.co.jp/

文章:宮原秀一氏(株式会社プラズマコンセプト東京代表取締役)

監修:仁科麻衣氏(呼吸器外科医師)

 

■殺菌とは

本来の「殺菌」という用語は「菌を殺すこと」を意味しており、対象や程度は保証されません。極端な話をすれば、1%の菌を殺して99%が残っている状態でも「殺菌した」と言えてしまいます。一方「滅菌」は「滅菌操作後、被滅菌物に微生物の生存する確率が100万分の1以下であること」と定義されています。弊社の施設では滅菌を保障することは不可能なため、本稿では「殺菌」という用語を用いますが、十分な「菌(ウイルス)を殺す効果」が見込めるものについてのみ「殺菌」それ以外は「制菌」などと区別しています。

 

■目次

殺菌技術としての大気圧プラズマ ※以下リンク

Q1. 大気圧プラズマの照射で新型コロナウイルスは殺せるのか?

Q2. 大気圧プラズマ殺菌装置は作れないのか?

Q3. プラズマ活性水(プラズマを水に溶かしたもの)は新型コロナウイルスに効くか?

Q4. 物体の表面のウイルス対策に使いたいが?

Q5. プラズマ殺菌に必要なものは?

Q6. プラズマから発生する紫外線を殺菌に使いたい

 

環境改善技術としての大気圧プラズマ

Q7. 空間殺菌に用いることはできないか?

Q8. 新型コロナの患者が居た部屋を殺菌したいのだが?

Q9. 衣服、書物、寝具などを殺菌したいのだが?

Q10. プラズマ活性水を除菌水として掃除などに使えないか?

Q11. OH、O3、ROSなどの供給源として大気圧プラズマが使えないか?

 

検出/治療(ケア)技術としての大気圧プラズマ

Q12. 大気圧プラズマで安価に一酸化窒素を合成できないか?

Q13. PCRや抗体検査などの分析ツールとしてプラズマを使えないか?

Q14. プラズマ乳酸菌、プラズマクラスター、ナノイー、アクティブプラズマイオン、光速ストリーマとは何か?

 

 

殺菌技術としての大気圧プラズマ

 

Q1. 大気圧プラズマの照射で新型コロナウイルスは殺せるのか?

SARS-CoV-2での実験は行っておりませんが、これまでの知見から、大気圧プラズマをウイルス本体に照射することができれば、殺滅することが可能です。インフルエンザ代替ウイルス(MS2)やノロウイルス代替ウイルス(ネコカリシウイルス)を用いた実験は、弊社のみならず、数多くの研究機関で良好な不活化(殺ウイルス)効果を示しています。

 

Q2. 大気圧プラズマ殺菌装置は作れないのか?

大気圧プラズマを用いてオゾン(O3)や二酸化窒素(NO2)を生成し、これらを殺菌因子として用いるというのが最も実現性が高いと思います。特に、二酸化窒素を庫内に充満させるスタイルの殺菌装置は、すでに複数メーカーにより販売されていますし、米国FDA認証を取得したものもあります。なお、オゾンや二酸化窒素は、発生するプラズマ温度帯域が狭いため、弊社の温度調整プラズマの 技術などを併用することで、効率の良いガス生成が可能となります。 大気圧プラズマそのもので殺菌するシステムは、作れないことは無いと思われますが、現時点では、用途がかなり限られてしまうのではないか、と考えています。大気圧プラズマによる殺菌に於いて問題となるのが以下の三点です。

・プロセスパリデーション(どこにプラズマが当たっていたのかの事後検証)ができない
・溝や孔などアスペクト比の高いものにはプラズマが侵入できず、殺菌不良となる
・粘液や有機物による膜(バイオフィルムなど)への浸透力が乏しい

このため、十分な洗浄処理を行ったあとにプラズマ殺菌を行う必要があるなど、いわゆる「お手軽な殺菌」を求める民生機には適していないと考えます。

 

Q3. プラズマ活性水(プラズマを水に溶かしたもの)は新型コロナウイルスに効くか?

SARS-CoV-2での実験は行っておりませんが、これまでの知見から、プラズマ活性水はSARS-CoV-2にも有効であると考えます。

ただし、次亜塩素酸ナトリウム製剤(ハイター、ピューラックス、ミルトンの類い)、クロロイソシアヌル酸(スパクリーン、風呂水ワンダーの類い)を 溶解することにより得られる次亜塩素酸水がSARS-CoV-2に有効であることが確認されていますので、特段の事情が無い限りプラズマ活性水を用いるメリットが無いと思います。

一方、手指など、人体の殺菌に於いては、エタノール–逆性石けん混合液(ウエルパス、アルボナースの類い)の使用が推奨されていますが、アルコール製剤は粘膜禁忌のため、粘膜の洗浄消毒に限りプラズマ活性水を用いることは今後の研究が期待される分野となります。

 

Q4. 物体の表面のウイルス対策に使いたいが?

大気圧プラズマによる表面加工/処理により、物体表面に菌やウイルスが付着しづらくしたり、制菌/抗菌加工を施したりすることは容易 です。 ウイルスに汚染された表面に大気圧プラズマを照射することで、ウイルスを不活化することは可能と考えます。ただし、表面のでこぼこが大きく、その中にウイルスが入り込んでいる状態や、粘液の中に潜むウイルスを殺すことは困難なので、水洗いをしてからプラズマ照射、というプロセスになります。 一般化するかどうか、は疑問ですが、手術室の壁全体にプラズマを発生させたり、布地構造の電極からプラズマを発生させたりすることは可能なため、菌やウイルスがついた瞬間に殺菌できる壁や洋服、というのはあり得るかもしれません。

 

Q5. プラズマ殺菌に必要なものは?

プラズマ発生装置と電気、そしてガス、になります。ガスとして空気を使えば、ランニングコストとしては電気代のみ、となります。

 

Q6. プラズマから発生する紫外線を殺菌に使いたい

すでに東芝さん、岩崎電気さんなどから殺菌ランプ(UVランプ)が市販されており、歴史的にもその効果が証明されていますので、あえて大気圧プラズマを紫外線発生のために用いる必要性はないと考えます。

 

 

環境改善技術としての大気圧プラズマ

 

Q7. 空間殺菌に用いることはできないか?

知りうる限り、医療現場では「空間殺菌」という概念は無く、 手術室など高度に管理されなくてはいけない環境でも、いわゆる「空間殺菌装置」などの配備はされていません。 その代わりに、HEPAフィルターで濾過されたクリーンな空気を天井から供給し、床や足下から排気させることで、 病原微生物の徹底的な排除を行っています。

ただし、プラズマ化された気体には、化学的に非常に活性な粒子が大量に存在し、これらはウイルスや菌を殺滅する効果を持っていますので、プラズマを空間中に放出する、 あるいはウイルスなどで汚染された空気をプラズマ化することで、空間中の菌数、ウイルス数を低減させることは可能であると考えます。 特に、災害被災地の避難所や展示会場など、大空間の菌数をある程度抑えたい、という用途に関しては、薬剤やフィルターなどの消耗品を必要とせず、電力だけで大量の空気を処理できる という大気圧プラズマの利点が発揮できる可能性が残されています。

 

Q8. 新型コロナの患者が居た部屋を殺菌したいのだが?

すでに制菌効果が実証されているオゾン(O3)や二酸化窒素(NO2)の発生装置として大気圧プラズマを活用するのがよいかと思います。(弊社は、空気などを原料にして、大量に二酸化窒素を合成する技術を保有しています。) また、ウイルスにより汚染された空気を戸外に直接排出することがためらわれる場合、排気の全量をプラズマ化する、ということも有効かもしれません。1,000~1,200 L/minの空気を連続でプラズマ化する技術はすでに実用化されておりますので、お問い合わせください。

 

Q9. 衣服、書物、寝具などを殺菌したいのだが?

例えば衣類ロッカーの中に大気圧プラズマ発生装置を備え、収納されている間に衣類についた菌やウイルスを低減させる、というのは可能です。実際に、海外から果物を運ぶコンテナの中に大気圧プラズマ発生装置を設置することで、腐敗や黴の発生を抑えられた事例が報告されています。

 

Q10. プラズマ活性水を除菌水として掃除などに使えないか?

プラズマ活性水中に含まれる活性粒子は、濃度が低いので、有機物が多く共存する清掃行為には不適当と考えます。手袋をした上で、次亜塩素酸ナトリウム製剤もしくは逆性石けん(オスバン、ザルコニン)をお使いになるのが、技術的にも、コスト的にもメリットが大きいと思います。

 

Q11. OH、O3、ROSなどの供給源として大気圧プラズマが使えないか?

空気清浄機や空間殺菌装置などの目的で、こうした「プラズマから発生するラジカル類」を殺菌因子として活用しよう、 という商品が散見されるようになりました。着眼点としては素晴らしく、おそらくそれなりの効果が見込めるかとは思います。 一方、弊社が扱う、いわば「工業用の大気圧プラズマ」は、発生させるラジカル類の量、濃度が桁違いに多く、濃いため、 そのまま室内の殺菌などに用いると、逆に人体に影響が出てしまうのではないかと考えます。 特に、高濃度のラジカル類で肺が暴露されると、肺気腫など、肺炎と同じような症状を起こしたり、 肺の細胞が傷つくことでかえってウイルスに感染しやすくなったり、などの副作用が懸念されます。 体育館や展示会場など、用途を限った試用が想定されます。

※ROS:Reactive Oxidation Species、活性酸素類の総称

 

 

検出/治療(ケア)技術としての大気圧プラズマ

 

Q12. 大気圧プラズマで安価に一酸化窒素を合成できないか?

できます。「一酸化窒素(NO)で重症者の呼吸改善」というFNNによる報道以降(2020/12/5)、弊社に問い合わせが急増していますが、 一酸化炭素吸入による肺炎の緩和ケアはさほど新しいものではなく、SARS-CoVによる重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した2003年には、すでに以下の3つの効果が認められています。

① 感染細胞内のコロナウイルス増殖抑制

② 血管拡張による肺換気血流改善とそれによる動脈血酸素化改善

③ 炎症抑制(白血球粘着抑制、血小板凝集抑制、血栓形成の抑制など)

大気圧プラズマを用いて空気から一酸化窒素を生成することは比較的容易ですが、治療に必要とされる20 L/min以上かつ160 ppm以上の高濃度で大量の一酸化窒素を安定に供給するためには、温度調整プラズマの技術が不可欠です。

 

Q13. PCRや抗体検査などの分析ツールとしてプラズマを使えないか?

PCRやウイルス解析などでは、狭細路に液体を通じたり、樹脂製ウェルに液滴を分注したりする作業があるようです。過去の事例では、狭細路を大気圧プラズマ処理することで、壁面と液体がなじみやすくさせ、圧力損失を下げ、送液を容易にすることに成功しています。また、樹脂製ウェルに大気圧プラズマを照射することで、静電気の発生を抑制し、液滴の飛散が発生しにくくなることが確認されています。これらは一例ですが、おそらく、こうした分析(検出)操作の様々なプロセスにおいて、大気圧プラズマが役に立つ箇所がたくさんあるとは思います。具体的な提案が難しい分野ですので、お困りの点をご教示いただき、解決策を一緒に考えさせていただければ幸いです。

 

Q14. プラズマ乳酸菌、プラズマクラスター、ナノイー、 アクティブプラズマイオン、光速ストリーマとは何か?

プラズマ乳酸菌はキリンホールディングスさんの商標(名称)であり、我々の扱うプラズマ、とは全く関係のないものです。ヒトの身体の中にある免疫細胞の一つ、「プラズマサイトイド樹状細胞」を活性化できる乳酸菌、 ということで「プラズマ」の名がついているようです。

一方、プラズマクラスターやナノイー、アクティブプラズマイオン、光速ストリーマはいずれも大気圧プラズマを利用し、空気中にイオンやラジカル類を放出するシステムです。

詳細は、各社のページをご覧ください。