2023.12.13
超高分子量ポリエチレンへの大気圧プラズマ処理とXPS分析
大気圧プラズマ処理を利用して、超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)製繊維の表面改質を行った事例についてご紹介いたします。
本研究は株式会社サンラインと岡山県工業技術センターとの共同研究の成果です。(令和5年度実用化技術開発事業)
1.背景・目的
株式会社サンラインは、釣り糸へ大気圧プラズマ処理することで、表面に撥水性や親水性などの機能性を付与しています。一般的に、大気圧プラズマ処理した表面の特性評価は、水接触角測定による濡れ性評価が最も手軽な手法です。しかしながら、水接触角測定による濡れ性評価だけでは、水接触角と釣り糸表面の化学結合状態の関係性を明らかにすることは困難でした。
プラズマ処理表面の化学結合状態の分析方法として、XPS分析(X線光電子分光法)があります。しかしながら、釣り糸は直径1mm以下と細く、また円柱状の物体であり、さらにはプラズマ処理直後に速やかにXPS分析を行う必要があるため、これまで詳細な評価ができませんでした。
そこで、X線照射径0.1mmのマイクロフォーカスX線を利用して、大気圧プラズマ処理を施した釣り糸最表面(nm領域)の化学結合状態を評価しました。
2.効果
研究の結果、超高分子量ポリエチレン繊維から成る釣り糸について、大気圧プラズマ処理直後の最表面の化学結合状態を評価することができました。
超高分子量ポリエチレン繊維の釣り糸に大気圧プラズマ処理を施した糸最表面の化学結合状態は、原子の組成比率では炭素原子の比率が低下し、酸素原子の比率が増加し、化学構造においては新たに親水性の官能基が確認されました。
本研究の成果は、2023年12月12日に開催された「第28回 岡山リサーチパーク研究・展示発表会」において、共同研究先の岡山県工業技術センターによってポスター発表されました。